フェラーリ アマルフィ スパイダー——640PS V8搭載の新型オープンGT
フェラーリが新型アマルフィ スパイダーを発表。640PSのV8ツインターボをフロントミッドシップに搭載し、0-100km/h加速3.3秒を実現。ソフトトップのパーソナライゼーション拡充や車両制御技術の刷新で、オープンGTとしての質を高めた。
V8の咆哮を、風とともに
フェラーリは2026年3月12日、新型「アマルフィ スパイダー」を発表した。フロントミッドシップに搭載された3,855cc V8ツインターボは640PSを発生し、0-100km/h加速3.3秒を実現する。ローマ スパイダーの後継にあたるこのモデルは、ソフトトップによるオープンエアの歓びを受け継ぎながら、デザイン、空力、車両制御のすべてを一新した。
620PSから640PSへ——熟成されたV8
アマルフィ スパイダーの心臓部は、先代ローマ スパイダーと同じ3,855ccのV8ツインターボだ。最高出力は620PSから640PSへ、20PS引き上げられた。7,500rpmでのピークパワー、3,000〜5,750rpmにわたるフラットな760Nmのトルク特性はそのまま受け継がれている。
変化は数字だけでは語れない。0-100km/h加速は3.4秒から3.3秒へ0.1秒短縮された。進化型の8速F1 DCTとの組み合わせで最高速320km/hに達する。エンジン単体の飛躍的な変化ではないが、後述するブレーキ・バイ・ワイヤやABS Evoといった車両制御技術の進化と合わせて、トータルでのパフォーマンスが磨かれた。
ソフトトップの進化——素材とパーソナライゼーション
ローマ スパイダーは、1969年の365 GTS4以来54年ぶりにフロントエンジンのフェラーリへソフトトップを復活させたモデルだった。アマルフィ スパイダーはその路線を踏襲しつつ、パーソナライゼーションの幅を大きく広げた。
5層構造のアコースティックファブリックによる遮音性・断熱性はフェラーリのリトラクタブルハードトップモデルに匹敵する。開閉は13.5秒で完了し、60km/h以下であれば走行中でも操作できる。格納時の厚さはわずか220mmとコンパクトで、荷室容量はルーフを閉じた状態で255L、開けた状態でも172Lを確保した。
選べるソフトトップのカラーはテーラーメイドファブリック4色とテクニカルファブリック2色の計6色。新色「Tecnico Ottanio」を含むテクニカルファブリックは、独自の織りが光の角度で立体的な表情を見せる。さらにトノーカバーや隣接するリアサーフェスにも同素材を延長でき、ルーフを開けた状態でも視覚的な一体感を生み出す。ソフトトップそのものがエクステリアデザインの一部として機能する設計だ。
流れるようなミニマリズム——エクステリアデザイン
フラヴィオ・マンゾーニ率いるフェラーリ・デザインスタジオが手がけた外観は、クーペのアマルフィが持つプロポーションと造形美を忠実に守っている。ルーフを開けても閉じても、流れるようなシルエットが崩れない。それがこのスパイダーの設計目標だった。
フロントには大型エアインテークと長く彫刻的なボンネットが広がる。リアにはインテグレーテッド・アクティブスポイラーを備え、鍛造ホイールとカーボンファイバーのディテールがスポーティさと洗練を両立させた。
新色「Rosso Tramonto」は、アマルフィ海岸の夕暮れからインスピレーションを得た赤だ。オレンジの色調を帯びた温かみのある色彩が、彫刻的なボディサーフェスの上で陰影を際立たせる。先に登場したクーペの「Verde Costiera」と合わせ、アマルフィの名にふさわしいカラーパレットが揃った。
ドライバーを包み込む空間
インテリアはデュアルコクピット構造を採用し、ドライバーとパッセンジャーをそれぞれ独立した空間で包み込む。物理ボタンを備えた新しいステアリングホイール、フェラーリの伝統であるスタートボタン、一体型センターディスプレイ。ダイナミックな走行中でも自然に手が届く操作系として設計された。
2+2のレイアウトにより、後席は子どもの乗車や追加の荷物スペースとして活用できる。オープン走行時の快適性にもこだわりが見える。リアベンチの背もたれに一体化されたウインドディフレクターは、ボタン操作で展開し、キャビンへの乱気流を抑制する。
走りを支える技術
パフォーマンスを安全に引き出すための技術も進化した。ブレーキ・バイ・ワイヤシステムはブレーキ効率とペダルフィールを向上させ、最新世代の「ABS Evo」はあらゆる路面状況で最適な制動力と安定性を提供する。
エアロダイナミクスでは、3ポジションのリアウイングが高速安定性に貢献する。フロントヘッドライト上部のバイパスはエンジンルームの圧力と温度を管理し、アンダーボディのボルテックスジェネレーターとディフューザーがダウンフォースを強化した。フェラーリは、オープン状態でもクーペのアマルフィと同等の空力性能を実現したと述べている。
デザインと制御技術で深化したGT
アマルフィ スパイダーの進化は、エンジン出力の大幅な向上ではなく、車両全体の仕上がりにある。620PSから640PSへの+20PSは数字としては控えめだ。だがその控えめな数字の裏側で、ブレーキ・バイ・ワイヤとABS Evoが車両制御を精密化し、アクティブエアロダイナミクスが刷新され、ソフトトップ素材のパーソナライゼーションが大幅に拡充された。変わったのは「速さ」ではなく「質」の部分だ。
開発コンセプトに掲げられた「パフォーマンス」「エレガンス」「ドライビングプレジャー」「使いやすさ」「多用途性」の5つが、スペックシートの派手な数字ではなく、乗る人の体験として統合されている。スーパーカーは特別な日のためだけのクルマではない。アマルフィ スパイダーは、そう語りかけてくるような1台だ。
主要スペック
| 項目 | アマルフィ スパイダー | 参考: ローマ スパイダー |
|---|---|---|
| エンジン | 3,855cc V8ツインターボ | 3,855cc V8ツインターボ |
| 最高出力 | 640PS / 7,500rpm | 620PS / 7,500rpm |
| 最大トルク | 760Nm / 3,000〜5,750rpm | 760Nm / 3,000〜5,750rpm |
| トランスミッション | 8速F1 DCT | 8速DCT |
| 駆動方式 | FR | FR |
| 0-100km/h | 3.3秒 | 3.4秒 |
| 0-200km/h | 9.4秒 | — |
| 最高速 | 320km/h | 320km/h |
| 全長×全幅×全高 | 4,660×1,974×1,305mm | 4,656×1,974×1,306mm |
| ホイールベース | 2,670mm | 2,670mm |
| ルーフ | ソフトトップ(13.5秒開閉) | ソフトトップ |
| 荷室容量 | 255L / 172L(開時) | — |
| 乗車定員 | 2+2 | 2+2 |
「Rosso Tramonto」はイタリア語で「夕焼けの赤」、クーペに設定された「Verde Costiera」は「海岸の緑」を意味する。どちらもアマルフィ海岸の風景から生まれた色だ。ちなみに、フロントエンジンのフェラーリにソフトトップが復活したのは先代ローマ スパイダーが初めてで、1969年の365 GTS4以来、実に54年ぶりのことだった。


