新型レクサス IS300h: EPS・AVS刷新で走りを再定義した2026年モデルの全貌
2026年1月発売の新型レクサスIS300h。パワートレインは据え置き、EPSとAVSをハードウェアレベルで刷新した。580万円からの価格設定、走りの進化、初代アルテッツァからの系譜を解説する。
レクサスが2026年1月8日に発売した新型IS300hは、パワートレインのスペックを据え置きながら、操舵系と足回りをハードウェアごと作り替えた大幅改良モデルだ。開発キーワードは「熟成」。チーフエンジニアの武藤康史氏が掲げたのは、ドライバーとクルマの対話の質を根本から高めるという思想だった。
何が変わったのか
新型ISの核心は、EPS(電動パワーステアリング)とAVS(アダプティブ・バリアブル・サスペンション)の同時刷新にある。いずれもソフトウェアの書き換えではなく、構造そのものを変えたハードウェアレベルの進化だ。
パワートレインは従来と同じ2AR-FSE型2.5L直列4気筒エンジンにモーターを組み合わせたハイブリッドシステムで、システム最高出力220PSを維持する。日本市場はIS300hのみの設定となり、海外で展開されるV6搭載のIS 350は導入されない。つまり今回の改良は、出力を上げるのではなく「同じ力をどう伝えるか」に集中させた内容と言える。
走りの進化: EPS・AVS刷新の中身
ステアリングの再設計
EPSは従来のラック同軸式からラック平行式に変更された。新たにバリアブルギヤと低慣性モーターを採用し、操舵フィールを一新している。
ラック平行式への変更は剛性の向上に寄与する。バリアブルギヤの採用により、交差点やワインディングロードでの少ない操舵角でも狙ったラインをトレースできるようになった。高速直進時の安定性も向上している。武藤はこの方向性を「ドライバーの意図がクルマに、クルマの挙動がドライバーに正確に伝わる対話」と表現した。
サスペンションの世代交代
AVSのアクチュエーターは、従来のステップ式から新規開発の内蔵式リニアソレノイドに置き換えられた。段階的に減衰力を切り替えていた旧方式に対し、新方式は連続的に可変する。減衰力の応答性は従来比で約4倍に向上した。
この変化が走りにもたらすのは、フラットなばね上の挙動だ。路面からの入力によるショック感を低減しつつ、車両挙動の安定性と乗り心地を高い次元で両立させている。
デザインの進化
エクステリア
低重心でワイドなスタンスを強調する新フロントフェイスを採用した。スピンドルグリルはブレーキダクトを取り込んだ新造形となり、リアにはLマークに代わるLEXUSロゴが入る。全長は4,720mmと従来比で10mm延長されたが、全幅1,840mm、ホイールベース2,800mmは変わらない。
F SPORTには空力性能を強化した新形状のリヤスポイラーと、新デザインの19インチ軽量アルミホイールが与えられた。新ボディカラーのニュートリノグレーを含む全8色を設定する。
インテリア
インストルメントパネル、センターコンソール、メーター、フロントドアトリムの意匠が刷新された。センターディスプレイは従来の10.3インチから12.3インチのタッチパネルに大型化し、全車標準装備となった。メーターも12.3インチTFT液晶に拡大されている。
F SPORTに設定された新インテリアカラーのPROMINENCEは、太陽の紅炎をイメージしたレッドとオレンジ系の配色だ。従来のフレアレッドよりも彩度が高く、スポーツセダンとしての主張を内装で表現している。
竹繊維複合材料「Forged bamboo」
コンソール上面とスタートスイッチベゼルには、新規開発のオーナメントパネルForged bambooが採用された。これは東海理化の竹繊維複合材料BAMBOO+を自動車用部品として初めて使った素材だ。竹繊維を最大55%配合した環境配慮型の複合材料で、東海理化の関連会社ミロクテクノウッドと高知県が2021年から共同開発を進めてきた。高知県内に工場を取得し、2025年11月から本格生産が始まっている。
歴代ISの系譜
ISの出発点は、1998年に登場したトヨタ アルテッツァだ。XE10型と呼ばれるこのクルマは、コンパクトFRスポーツセダンという新ジャンルを切り拓き、BMW 3シリーズへの対抗馬として企画された。RS200に搭載された3S-GE型2.0L直4は210PSを発生し、6速MTも用意されていた。
2005年にはレクサスブランドの日本展開と同時に2代目XE20型が登場する。V6エンジンを搭載し、2007年には5.0L V8で423PSを発生するIS Fが追加された。レクサスでスポーツするという新たな提案だった。
3代目となるXE30型は2013年にデビュー。プラットフォームの世代をまたぎながらも、2020年のビッグマイナーチェンジでトヨタテクニカルセンター下山での走り込みを経て走りを大幅に改善した。そして今回の2度目の大幅改良で、EPS・AVSをハードウェアレベルで刷新している。
初代から一貫しているのは、レクサスラインナップにおいて「走りを楽しむコンパクトFRセダン」であり続けていることだ。
考察: 「熟成」が意味するもの
BEVシフトの潮流の中で、内燃機関を搭載したFRスポーツセダンは希少な存在になりつつある。BMW 3シリーズやメルセデス・ベンツ Cクラスもマイルドハイブリッドやプラグインハイブリッドへ移行が進む。ISが選んだ道は、2.5Lストロングハイブリッドという既存のパワートレインを維持しつつ、走りの質そのものを磨き上げることだった。
価格面でも注目すべき点がある。ベースグレード580万円からという設定は、708万円前後のBMW 320i M Sportや742万円前後のメルセデス・ベンツ C200と比較して100万円以上安い。価格上昇幅はベースグレードで53万円、F SPORTで54万円だが、12.3インチディスプレイの標準化やプロアクティブドライビングアシストの新採用といった装備拡充を考慮すると、実質的な価格競争力はむしろ高まったと言えるだろう。
新型ISは、次世代プラットフォームへの移行を急がず、現行の器の中でできることを徹底的にやり切るという選択をした。それを「熟成」と呼ぶ開発陣の姿勢には、このクルマへの確かな信頼が見える。
スペック・価格
| 項目 | IS300h |
|---|---|
| エンジン | 2AR-FSE 2.5L 直4 |
| エンジン出力 | 178PS / 6,000rpm |
| エンジントルク | 221Nm / 4,200-4,800rpm |
| モーター出力 | 143PS |
| モータートルク | 300Nm |
| システム出力 | 220PS |
| トランスミッション | 電気式無段変速機 |
| 駆動方式 | FR |
| 全長×全幅×全高 | 4,720×1,840×1,435mm |
| ホイールベース | 2,800mm |
| 車両重量 | 1,710kg |
| 燃費(WLTC) | 17.6km/L |
| グレード | 価格 |
|---|---|
| IS300h | 580万円 |
| IS300h version L | 610万円 |
| IS300h F SPORT | 635万円 |
| IS300h F SPORT Mode Black V | 675万円 |
新型ISのコンソールに使われているForged bambooの原料は、高知県産の竹だ。東海理化の関連会社ミロクテクノウッドが高知県と2021年から共同開発を進め、竹繊維を最大55%配合した複合材料BAMBOO+を実用化した。高知県内に工場を取得して2025年11月から本格生産を開始しており、自動車部品への採用は今回が初となる。



