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26式GRヤリス 発売 — 新GRステアリングとPOTENZA RACE標準化で走りはどう変わるか
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26式GRヤリス 発売 — 新GRステアリングとPOTENZA RACE標準化で走りはどう変わるか

2026年3月13日注文受付開始、4月6日発売の26式GRヤリス。新設計GRステアリング、EPSの再チューニング、POTENZA RACE標準装着——数字に現れにくいが、クルマと会話する密度に直結する3つの進化を読む。

2026年3月13日、TOYOTA GAZOO Racingは「26式GRヤリス」の注文受付を開始した。発売は4月6日。毎年モータースポーツの現場で得た知見を量産車にフィードバックするGRヤリス特有の改良サイクルで、今年の主役は「手に伝わるもの」だ。

新設計のGRステアリング、電動パワーステアリング(EPS)の再チューニング、そしてブリヂストン・POTENZA RACEの標準装着。いずれも数字に現れにくいが、クルマと会話する密度に直結する変更である。

26式GRヤリス 外観(フロント3/4ビュー)
出典: TOYOTA GAZOO Racing

「26式」という命名の意味

GRヤリスには「25式」「26式」という年次改良の呼称がある。軍用装備品の採用年を示す「式」の字にならった命名だ。誇張でも洒落でもなく、TOYOTA GAZOO Racingがこのクルマに込めたメッセージそのものだと言える。

WRCのラリー1規定車両(GRヤリス Rally1)と開発を共有し、競技現場で得たフィードバックを毎年量産車に織り込んでいく。それが年次改良の実態であり、「式」という呼称はそのサイクルを可視化したものだ。


新GRステアリング — プロの声が形になるまで

最も目を引く変更が、新意匠の「GRステアリング」の採用である。

開発の出発点は、モータースポーツの現場から上がった具体的な不満だった。従来のステアリングでは、コーナリング中の操作時にスイッチ類へ誤って触れないよう配慮が必要で、「手のひらを理想的な位置に置けない」という声があった。ステアリングを押す操作が求められる場面で、グリップが手に馴染まないという問題だ。

解決策として採用されたのが、左右専用のグリップ形状だ。コーナリング時の押し操作でも手のひらがフィットするよう、左右で形状を変えた。同時にステアリングを小径化し、操舵レスポンスを高めた。スイッチ類は独立配置に整理され、リング状のイルミネーションが視認性を補う。

理屈より体感が先に来る変更だが、背景にあるのは「プロが使う場面での限界を下げる」という発想だ。サーキット走行や本格的な峠での使用を想定したとき、ステアリング操作の自由度が上がることの意味は小さくない。

新GRステアリング クローズアップ
出典: TOYOTA GAZOO Racing

電動パワーステアリングの再チューニング

ステアリングの変更に伴い、電動パワーステアリングのセッティングも手が入った。

具体的には、トルクセンサー内のトーションバー剛性の最適化と、ステアリングトルクの検出範囲を広げるソフトウェア制御の変更だ。これにより、極めて高負荷での旋回時にも最適なアシストを維持できるようになった。

この変更が意味を持つのは、上位グレードに標準装着されるPOTENZA RACEのようなハイグリップタイヤを使う場面においてだ。タイヤのグリップが上がれば、コーナリング中にドライバーに返ってくる荷重も大きくなる。その領域でのEPSの追従性を高めたと読むのが自然だろう。ステアリング、EPS、タイヤの三つがセットで進化しているのは、偶然ではない。


ブリヂストン・POTENZA RACE — タイヤが示すもの

「RZ "High performance"」以上のグレードに、新開発のブリヂストン・POTENZA RACEが標準装着される。従来はダンロップ SP SPORT MAXX 050を装着していたが、26式ではモータースポーツ向けに新開発されたタイヤへの切り替えとなった。

POTENZA RACEは限界領域でのグリップ維持と制御性を重視したタイヤだ。日常使いでは穏やかに、限界付近では高いグリップを発揮する設計で、ストリートとサーキットをつなぐ位置づけといえる。BBS製の鍛造ホイールとの組み合わせも、上位グレードの特権だ。

「RZ」グレードはダンロップ SP SPORT MAXX 050にENKEI製ホイールの組み合わせを継続する。グレードによってタイヤの性格が明確に違うのは、それぞれの用途に正直な設計だ。


グレード・価格一覧

グレード6MT(4WD)GR-DAT 8AT(4WD)
RC3,617,200円3,967,200円
RZ4,537,200円4,887,200円
RZ "High performance"5,037,200円5,387,200円
RZ "High performance" + Aero5,532,200円5,882,200円

エンジンは全グレード共通で、直列3気筒1.6リッターターボ(304PS / 400Nm)。駆動方式はGR-FOUR電子制御4WD。「RC」はモータースポーツ参戦を前提としたベースグレードで、競技改造に向けた素地を持つ。

26式GRヤリス エアロパッケージ装着車
出典: TOYOTA GAZOO Racing

この改良が語ること

26式で変わったのは、スペックシートに載る数字ではない。エンジン出力は据え置き。寸法も変わっていない。変わったのは、ドライバーとクルマの間のインターフェースだ。

新GRステアリング、EPSのチューニング、タイヤのアップグレード——この三点が束になって「伝わる情報の精度を高める」方向に振られている。走りの限界値を上げるより、限界付近での会話の質を上げた改良だと言える。

TOYOTA GAZOO Racingが毎年このクルマに手を入れ続けるのは、GRヤリスがまだ完成形ではないという認識があるからだろう。WRCとのフィードバックループが回り続ける限り、このクルマは毎年少しずつ正直になっていく。


GRヤリスの4WDシステム「GR-FOUR」は、前後のトルク配分を3つのモードで切り替えられる。NORMALモードは前60:後40、GRAVELモードは前53:後47、そしてTRACKモードでは前60〜30:後40〜70の範囲で連続可変する。TRACKモードではコーナー進入で後輪に最大70%のトルクを配分でき、ドライバーの意図に応じてリヤを積極的に使う走りが可能だ。もともとWRCの参戦車両(ラリー1規定)でプロドライバーがステージごとに配分を調整するために設けられたシステムが、そのまま量産車に落とし込まれている。